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最高裁判所第一小法廷 平成元年(あ)230号 決定 1990年11月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人加藤保夫の上告趣意は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であり、弁護人小早川輝雄の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、弁護人門司惠行の上告趣意は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、弁護人吉嶋覺の上告趣意は、違憲をいうが、実質は単なる法令違反の主張であって、いずれも、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

所論にかんがみ、職権により公職選挙法一三九条違反の罪の成否について判断する。原判決及びその是認する第一審判決の認定によると、被告人は、昭和六二年四月一二日施行の徳島県議会議員一般選挙に際し、(1)  同選挙に立候補しようとする甲野一郎に対し、同人の立候補届出のない同年三月下旬ころ、ブランデー〇・七リットル入り瓶四八本(時価合計五七万六〇〇〇円相当)を、(2)  同選挙に立候補した右甲野に対し、告示日である同年四月三日、清酒一・八リットル入り瓶一〇本(時価合計一万七八〇〇円相当)を提供したというのであるところ、被告人は、右選挙に際し、甲野の選挙運動を積極的に支援し、右酒類のほかにも、同年三月初旬ころ焼酎二〇ないし三〇本位を甲野に提供しており、右ブランデー及び焼酎については、それらを選挙人等に飲酒させるなり、配布するなりすればよいとの趣旨を述べて提供したというのである。この事実関係に照らすと、被告人は、右ブランデー及び清酒につき、川内がそれらを同人の選挙運動に関して使用することを提供の動機としたものと認められるから、本件酒類の提供は、公職選挙法一三九条にいう「選挙運動に関し」てされたものに当たるというべきである。したがって、被告人の右の各所為につき同条違反の罪が成立するとした原判決の判断は、正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 大内恒夫 裁判官 角田禮次郎 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)

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